百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

北欧の「日常」

あるノルウェーの大工の日記/オーレ・トシュテンセン 

中村冬美/リセ・スコウ 翻訳 牧尾晴喜 監訳 エクスナレッジ

 

デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり/中島健祐 学芸出版社

 

ヘルシンキ 生活の練習/朴沙羅 筑摩書房

 

憧れる国は?とか、行ってみたい国は?と聞かれたら、北欧の国を答える。ぱっと口をついて出るのは、デンマークかな。国民の幸福度が高いとか、暮らしを豊かにすることに対する感度が高いとか、単純に好きなデザインのプロダクトが多いとか、いろいろな理由があるけれど、これ、と強い主張をして他人を納得させられるかと言うと、難しい。なにせ行ったことがないから。結局はイメージ、想像でしかない。何をもとに想像するのかと聞かれると、それはもちろん、本だ。

 

ノルウェーを舞台にある大工さんの本当に日常的なやりとりが綴られるエッセイがある。見積をつくるという、本当に地味で、今風の言葉でいうところの「映え」のない出来事が淡々と書かれている。そんな職人の日記を読んで、海を越えた向こうでも日々地味な作業の繰り返しなのかもしれないと思ったら、なんだか気が楽になってくる。

 

消費税率が25%と、日本人が聞いたら驚くような税制度をつくっているデンマーク。自動車登録税も高く、350万円の車を買うと支払総額が500万円を超えるという。それでも国民の幸福度が高いということは、国民が幸せを感じるための地盤を国が保障しているということだろう。スマートシティを目指すためや、サスティナブルな都市をつくるための具体的なプロジェクトについて紹介する本を読んで、日本と考え方が違う点や、逆に同じ点などを探っていくのも、羨望の対象である国を良く知るために必要だろう。

 

ヘルシンキ。ここも憧れる。アルヴァ・アアルトの建築を見たり、家具に触れたりしたい。その街で、これまた普段の生活を淡々と描く日記がある。メディアで取り上げられるような目立つ出来事や文化だけでなく、あくまでも「日常」を読む。そうすれば、「良いことばかりではない」と気づけるだろうし、フィンランドが遠い果ての地ではなく、身近な、手の届く場所になるような気がする。