街場の文体論/内田樹 文春文庫
「声に出して読みたい日本語」という齋藤孝の本があったけれど、私にとっての「声に出して読みたい本」は、と聞かれたら、内田樹の「街場の文体論」と「最終講義」を挙げる。著者が大学の講義でしゃべったことをまとめた本で、1講1講にたくさんの情報、そして深い洞察があふれている。特に「クリエイティブライティング」というテーマについての講義をまとめた「街場の文体論」で著者が述べていることは、言葉を生み出して、それを残し、一人でも多くの方に届いてほしいと思っている自分にとって切実なものだ。ここに書かれているものを、私も学生に向かって教え諭すようにしゃべることができたら。そんなことを思いながら、自宅で独りでいるときなどは音読をしている。
宛先をどのように意識したら良いか?「これだけは何としても伝えたい」という切迫感を自分は持っているか?特定の読み手が評価してくれればそれで良いと思ってはいないか?丁寧にくみ取り、自分のものにしていかなければならないと思うような知見が多く詰まっている。