子供の頃、実家では朝日新聞の朝刊をとっていた。子供に新聞記事は読めなかったから、父が読んだ後に目を通すのはテレビ番組欄と4コマ漫画くらいだった。4コマ漫画はいしいひさいちの「ののちゃん」。それより前は「となりの山田くん」だった。元気なののちゃん、どこか抜けたお母さん、これまた元気なおばあちゃん、ふざけた担任の藤原センセ。など独特なキャラクターとイラストが毎朝楽しみだった。好きで良く読んでいるお茶の水女子大の土屋賢二教授の面白エッセイの表紙も、いしいひさいちのイラストだ。ののちゃんは私にとってかけがえのない存在だ。
そのいしいひさいちの4コマ漫画で哲学の思考を読み解くのが本書。ハイデガー、ニーチェ、レヴィナス、そしてマルクス・・・。きちんと真面目に、そして緩やかなオチは忘れずに現代思想に迫る。気分は、ののちゃんに登場する教頭先生(なんでも、哲学を教える土屋教授がモデルなのだとか)。小学生の頃に朝日新聞の4コマ漫画を読んでいた自分がそのまま勉強して大人になったような、そんな嬉しい錯覚に襲われた。