百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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アヒルと鴨のコインロッカー

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アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎 創元推理文庫

 

久しぶりにページを開いて、挟まっていた栞を見る。そこに読み途中の日付をメモしていた。6月18日。西暦は書いていないが、感覚的に去年でないことは確かだ。2年前か3年前か。いずれにせよ、読み始めてから数年経っている。こういう読み方だからダメなんだよなぁと思って残りのページを読み始めたら、止まらなくなった。ラスト50ページで電車から降りなければならなくなり、仕事を始めるまでになんとしても読み終えたくて、仕事前に駅前のドトールに立ち寄って読み終えた。一冊のうち、前半と後半とで読むペースのバランスが明らかにおかしい。

 

今更だけれど、そんな話だったのか!と驚いた。十数年前、原作を読む前に映画を観た記憶はあるが、うろ覚えだ。アパートの隣人に「書店を襲って広辞苑を盗もう」と持ち掛けられる大学生・椎名の話と、琴美とドルジがペット殺しに出くわす話が交互に展開され、最後に一つになる。一人称がすり替わりながら出来事をスリリングに描写していく展開の面白さよりも、二つのストーリーに共通する人物の秘密が明らかになったときの驚きの方が大きかった。