ルー、山へ行く/さく:アヌック・ボワロベールとルイ・リゴー やく:うちだ さやこ アノニマ・スタジオ
でこぼこしているもの。平たんでないもの。立体感があるもの・・・。そうしたもの惹かれるようになったことを美的感覚として意識するようになったのは、建築の仕事をするようになってからだろうか。つるつるより、ざらざら。凹凸の間には起伏があって、その中間に影が生まれる。いわゆる「奥行き感」がそこにはあって、チープなものにも洗練さが宿る。暮らしにおける素材選びにも、その選定基準を適用してきた。
飛び出す絵本に魅力を感じるのは、もしかしたらそうした背景があってのことなのかもしれない。「ルー、山へ行く」は、フランス人作家による旅の絵本。山登りでの風景の中にオオカミが隠れている。通常平面を構築する本の世界で、立体的なつくりで景色の距離感を生み出すしかけは圧巻。奥行き感のある本なんて、そうそうない。