百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

MENU

田舎暮らし毒本

f:id:bibbidi-bobbidi-do:20211124074605j:plain

田舎暮らし毒本/樋口明雄 光文社新書

 

コロナ禍で都心から地方への移住や二拠点居住の要望が増えている中、それよりも前に地方移住を実現した著者が、その現実を伝える。読本の「読」を「毒」に書き換えたタイトルが印象的。

 

とかく地方移住というとその良さばかりが強調されて、現実的なところ、そもそものデメリットを聞く機会は少ない。移住者を受け入れて地方を活性化させようとする行政もそうだ。ただし、地方は当然都心とは比べ物にならないくらい不便だし、そこで暮らす人も決して時間に余裕があるとは限らない。身のまわりの維持管理や人間関係のトラブルに汗を流すことにもなる。ここで言いたいのは、だから移住はやめましょう、ということではなく(現に著者は夢をもって地方へ行った)、そういう現実的なこともあるのだということを知った上で、それでもいまより幸せかということを慎重に検討すべきだよね、ということだと思う。一部分だけを切り取って発信するメディアの情報だけが正しいと思ってはいけない。そこには、選択的に聞かされないという形での「嘘」もある。