海岸線の歴史/松本健一 ミシマ社
新刊 1,980円
島国であり、国土を覆うように長い「海岸線」を持つ日本。その海岸線がどのように成り立ってきて、日本人がどのように捉えてきたのか、その歴史をたどったのが本書だ。海岸線に注目し、そこから時代の変化を考察する文明論である。
人間と海とが接触する場所の変化を書いた書物がこれまで無いに等しかったことから、著者がそれならば自分で書いてしまおう、と思い立って書かれた、とある。横浜や浦賀などを見れば分かる通り、海岸線は海と陸との接点であり、同時に外国からの船を迎え入れる拠点でもある。その海岸線に対する日本人の意識が遠のいていて、複数の意味で海岸線が日本から奪われていると著者は言う。その象徴的な例として、北朝鮮による拉致被害者を挙げている。わたしはそのような問題を起点として海岸線を捉えたことがなかった。島国・日本で生きる上で、重要かつ身近な新しい視点を授けられたような気がした。