百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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ミエナイイト

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去年の1月。本屋「青と夜ノ空」で、「ことばの教室 みせのなまえをかんがえる」というワークショップに参加した。詩人のウチダゴウさんの指導のもと、与えられたテーマの架空のお店に名前をつけるというもの。考案した名前は最後、ウチダゴウさんに手書きで紙に書いてもらう。記念の紙を受け取り、机に貼って眺めるようになってもうすぐ2年。その間、頭にもくもくと浮かんでは消えた想いを、はやく形にしたいと気が急いていた。それをこのブログの一コーナーという形で、まず実現させよう。

 

その時わたしが選んだお店は「文房具屋」。ただの文房具屋ではなく、「取扱商品の選定基準は『愛』」という細かい設定が与えられた。どのようにアイデアを出したら良いのか、ウチダゴウさんの意見を聞きながら、ブレインストーミングを行う。30分ほど考えたのだったか。最終的に決めたのは「ミエナイイト」だった。見えない糸。イメージするのは、糸電話だ。想いのたけをラブレターにしたためて相手に贈るとき、相手との間には見えない糸があって、その糸が二人をつないでいる。手紙を通して言葉が伝わる。それは、放った声が糸電話の糸を通じて、遠く離れたところにいる相手の耳に届くのに似ている。他人にも聞こえるような大声を出す必要はまったくない。小さな声でよい。その小さな声を、相手に確実に届ける見えない糸の役割が、文房具、そしてそれを売る文房具屋にあるのではないか。そう思った。

 

わたしにとっての「愛のある文房具」を紹介するのがこのコーナーの目的だ。愛のある文房具は、心地よい読書体験にどこか馴染むように思う。文房具を使って書かれた文字が、やがて美しい本になる。本を読んで学んだことがまた、文房具という道具を使って自ら書くという新たな行為につながる。そんな、本や読書と密接に結びつく文房具にスポットをあてていきたい。

 

そしてその先の夢は、文房具屋「ミエナイイト」を実際につくることだ。