普段着の住宅術/中村好文 ちくま文庫
店主所有古本ですがきれいな状態です。気に入ってくださった方には800円(税込)でお譲りします。
毎日の暮らしを豊かにする方法として、住宅そのものは実はそれほど重要ではないのかもしれない。そう思うようになったのは、割と最近のこと。住宅は暮らしを包む箱のようなもので、それが豪華であるかどうかはあまり暮らしの質に関係しない。それよりも、テーブルや椅子など身体で触れる家具や、食器類や文房具、棚に飾る置き物など、そういった道具の方が、暮らしの快適性に寄与する「のりしろ」が大きい。それが建築業界で一定期間仕事をし、また一消費者として暮らしている中での、実感だ。
だから、中村好文「普段着の住宅術」を読んで、「住宅は箱であってよい」という著者の考えに触れ、また神聖な場所をつくる床の間チェストなど家具の重要性を説いた言葉に触れ、自分の想いが強化されたように感じた。建築家である著者の、前衛的でない、「普段着の」「普通の声で語り掛けてくる」住宅づくりへの考えをまとめたエッセイ。