百日紅と太陽

  真夏の太陽に向かって枝を伸ばし、花を咲かせるサルスベリのように。自分の成長を実感できるような読書体験を届ける本屋です。

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暮らしを手づくりする

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暮らしを手づくりする 鳥取・岩井窯のうつわと日々/山本教行 スタンド・ブックス

 

住宅は、完成したときがゴールではない。新しい生活が始まるのだから、これからが本当のはじまり、スタートである。だから、つくる過程がどれだけ有意義であっても、完成しておしまい、と気を緩めるのではなくて、これから新生活をさらに有意義なものにしていくために力を注いでほしい。このような考え方でいま、コーポラティブハウスの管理組合の運営をサポートしている。自分の事務所で企画設計した住宅で暮らす入居者に、つくったときは楽しくても、その後の暮らしでたくさんの不満が募って、「この住宅を選んで失敗だった」と思われるようなことは、絶対にしたくない。つくる時間よりはるかに長い「暮らす」という時間。その時間を快適で、豊かにしてほしいという想いはそのまま、つくり手の立場である設計者がその住宅の管理運営に引き続き関与することに結びつく。クライアントは皆、「この住宅を選んで大成功だった」と思ってもらえるような暮らしができているだろうか。ふとそう想っては、なかなか至らない自分を励ます。

 

器づくりも同じで、「つくったところからが本当のはじまり」と言う。試作品をつくり、使ってみる。使いづらい点があったら、なぜ使いづらいのかを考える。それを真剣に考えて、次にいかす。この試行錯誤を繰り返すことで、良い器ができる。なぜ使いづらさを感じるのか、その違和感に「気づく」ことが何より大切だとも言う。その気づきの感度を良くすることが、よりよいモノづくりにつながるのだろう。小さな違和感を見逃さないこと。その違和感を察知するアンテナを意識して、自分もものごとを発信していきたい。

 

「暮らしを手づくりする」お仕着せでなく、他人が良いと言ったからでもなく、自分が主体的に選んで暮らしを楽しもうとする姿勢を、一言で表現したタイトルだと思う。「暮らしを手づくりする」ことが、自分の理想だ。